クリーンエネルギー活用の鍵――小型で安価なレドックスフロー電池を開発

クリーンエネルギーは気候変動に対する主要な対応策だが、太陽光や風力による発電は条件により変動が大きいため、単独で信頼性の高い送電網を構築することが難しい。また、リチウムイオン電池はエネルギー貯蔵性に優れているが、生産に必要な資源には限りがある。

電解液が電解質タンクと各電池セルを循環することで電気を蓄える酸化還元型二次電池であるレドックスフロー電池は、有望な再生可能エネルギー貯蔵ソリューションだ。しかし、既存のフロー電池はセルサイズが大きいため設置面積に課題があり、コストも高いという課題がある。今回ジョージア工科大学の研究チームは、従来品の75%まで小型化した電池セルを開発し、フロー電池全体のサイズとコストを削減することに成功した。大規模な商業ビルから一般家庭まで、電力供給方法に革命をもたらす可能性がある。研究成果は、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に2022年12月18日付で公開されている。

従来の平面型レドックスフロー電池は、大型の流量分配器とガスケットを必要とするため、そのサイズとコストが増す一方で、全体的な性能は低かった。そこで研究チームは、設置面積とコストを削減するため、フローセルの体積出力密度(W/L-of-cell)を向上させることを目的に研究を行った。

着目したのは、中空糸と呼ばれる繊維状のフィルター膜でできたサブミリメートル束状マイクロチューブラー(SBMT)膜という構成だ。化学物質の分離に広く用いられているSBMTは、追加の支持構造なしでイオンが通過する膜全体の圧力を緩和できるため、省スペース設計が可能だ。

研究チームは膜間距離を約100分の1まで短縮するSMBTを開発した。このマイクロチューブ膜は、大きな支持材を必要とせず、電解質分配器としても機能する。束ねられたマクロチューブは、電極と膜の間の距離を短縮し、体積出力密度を増加させる。

新しい電池構成を、バナジウム、臭化亜鉛、臭化キノン、ヨウ化亜鉛の4種類の化学物質で検証したところ、どの化学物質でも機能した。中でもヨウ化亜鉛のエネルギー密度が最も高く、住宅用として最も効果的であることがわかった。ヨウ化亜鉛はリチウムと比べて多くの利点がある上、酸化亜鉛となって酸に溶解するためリサイクルも容易だ。

ヨウ化亜鉛を用いたフロー電池は、220時間以上、オフピーク時の2500サイクル以上動作した。またコストに関しては、リサイクル電解液を使用すると800ドル/kWhから200ドル/kWh以下に削減できる可能性がある。

研究チームはこのヨウ化亜鉛型レドックスフロー電池の商業化に取り組んでおり、バナジウムなど他の化学物質を用いたフロー電池の開発とスケールアップにも取り組んでいる。スケールアップするためには、現在は手作業で行っている中空糸モジュールの製造を自動化することが必要となる。

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