医療機器、サービスエンジニアは大変?気になる年収や他のエンジニアとの違いをご紹介

病院に行くと検査や治療で必ずお世話になる医療機器。そんな医療機器の開発から製造、運用、保守をするのが医療機器エンジニアで、私たちの健康や命に関係する、とても重要な仕事を担っています。この記事では、医療機器エンジニアと他分野のエンジニアとの違い、仕事の特徴、求められるスキルと知識、どのような人に向いているかなどについて解説していきます。

医療機器エンジニアとは

医療機器エンジニアとは、医療機器の開発や生産、設置、操作方法の指導、保守、管理、点検、修理などを担う職種のことです。ここでは一般的な呼称として「医療機器エンジニア」を使いますが、開発専任エンジニアとサービスサポート専任エンジニアでは仕事内容や働き方が大きく異なるため、必要に応じて「開発エンジニア」「サービスエンジニア」と使い分けています。

医療機器には診断系と治療系、その他に属するものがあります。診断系はPET(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)やPET-CTシステム、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)、内視鏡(ビデオスコープ)など、治療系は人工呼吸器や人工心肺システム、ペースメーカー、心電図解析装置など、その他の医療機器には家庭用マッサージ器などが含まれます。

医療機器エンジニアは、医療行為に必ず必要となる機器を専門に扱うスペシャリストであり、人の健康や命を支えるとても重要な役割を担います。医療機器は年々高度化が進むとともに市場が成長していることから、医療機器エンジニアの求人も増加することが見込まれます。

医療機器、サービスエンジニアの仕事の特徴

医療機器エンジニアにはどのような特徴があり、他業種のエンジニアと比べて何が違うのかを見ていきます。

仕事量が景気に左右されない

産業機械メーカーの多くが国内外の景気によって仕事量が影響を受けるのに対し、医療機器メーカーは景気に左右されにくい特徴があります。それは世の中の景気がどうであれ、医療行為への需要が大きく変わることがないためです。そのため、他業種のエンジニアと比較し、医療機器エンジニアは世の中の景気に捉われることなく、安心して長期的に働けるという強みがあります。

高度な専門知識が必要

医療機器の開発エンジニアには高度な専門知識が求められることから、医師や臨床工学技士、電気・機械工学の研究者といったキャリアを積んできた人たちが少なくありません。サービスエンジニアにはそこまで高度な知識は必要ありませんが、キャリアアップのためには医療に関する専門知識に加え、電気や機械などの製品を構成している技術知識もある方が望ましいでしょう。

顧客が医療機関

多くの機械や装置メーカーが営利目的の企業に製品を販売するのに対し、医療機器メーカーは非営利の医療機関に製品を販売し、アフターサービスを提供します。医療機器を実際に扱う医師や看護師、診療放射線技師、臨床工学技士だけでなく、決済の決定権を持つ事務長や病院長などへの丁寧な説明や提案、フォローが求められます。

先端技術に触れられる

医療現場でもDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速しており、ウェアラブル機器やICT(情報通信技術)などを活用したデジタルヘルスケアに注目が集まっています。また、AI(人工知能)による画像診断や手術支援ロボットなどの開発と導入も進んでおり、最先端の技術に触れられるのも魅力の1つです。

医療機器、サービスエンジニアの給与事情など、待遇事情

医療機器エンジニアの平均年収はどの程度か、また、仕事内容で違いがあるのかなどを具体的に見ていきます。

平均給与

求人ボックスによると医療機器エンジニアの平均年収は約500万円ですが、レンジは約340~930万円と幅があることから、企業や勤続年数、実績、仕事内容などで差があることが分かります。例えば営業職の平均年収は450〜600万円で、目標を達成するとインセンティブが追加される企業では、実力次第で20代後半でも年収1000万円以上も可能です。

HAYSによると、研究開発職の平均年収は450〜600万円で、マネージャーは800〜1200万円、ディレクターは1200〜2000万円と昇給が期待できます。サービスエンジニアの平均年収は450〜600万円で、部長になれば800万円以上、外資への転職で1000万円以上も可能です。サービスエンジニア全体の平均年収は約445万円なので、医療機器サービスエンジニアは比較的年収が高いと言えます。理由としては、医療機器業界が安定していることと、より高い専門性が求められることが考えられます。また、医療機器のサービスエンジニアと開発エンジニアでは仕事内容が大きく異なりますが、年収では同程度が期待できそうです。

良くある待遇

現在出ている求人情報を調べると、診療台やレーザー機器、レントゲン、CTといった歯科医療機器の修理・メンテナンス要員のサービスエンジニアを募集しています。パソコンと連動するレントゲンや口腔内カメラなどを担当するデジタルエンジニアは、ソフトウェアのアップデートや通信環境の整備などの業務を担当します。待遇は各種手当や社会保険を完備し、入社時の年収は370~580万円、課長クラスで750万円となるようです。入社後の研修と配属後のOJT研修に加え、定期的な研修体制が整っており、歯科業界や商品知識などの集合研修やメンテナンス平準化研修などを実施している企業もあるようです。また、業務に関連する歯科定期メンテナンス費用の補助、口腔ケア用品社内販売があるのも特徴です。

開発エンジニアについては、心電計、血圧脈波検査装置の開発業務での求人があり、新規開発および既存製品の機能追加、保守開発、関係部門とのコンセプト共有、医療現場でのリサーチなどが仕事内容となっています。年収は550万~1000万円で、5年以上の開発とプロジェクトリーダーの経験が必要とされています。

医療機器のエンジニアとして働くやりがい

医療機器エンジニアが他の産業機器・民生品向けの機械エンジニアと大きく異なるのは、人の健康や命に直接影響を与える可能性が大きいということです。そのことにやりがいを感じる人もいれば、責任の重さにプレッシャーを感じる人もいるでしょう。

人の健康や命を守る仕事として最初に思い浮かぶのが医者ですが、技術を活用することでも多くの人たちの健康や命を守ることができます。例えば、早産で小さく生まれた赤ちゃんの全身管理をする保育器などの進歩により、日本の新生児死亡率は先進国の中でも低く抑えられています。医者でなくても多くの命を救えることが、医療機器エンジニアの大きなやりがいになっています。

医療機器のエンジニアとして働くためには

医療機器の開発エンジニアになるためには、医療だけでなく、電気や機械の高度な知識、他分野での研究開発の経験が求められます。サービスエンジニアの場合は、機械や装置の修理・メンテナンスなどの経験があれば求人への応募は可能ですが、現場となる医療機関での仕事になるため、勤務地が頻繁に変わったり、勤務時間が不規則になったりする可能性が高いです。自分にはどの程度のスキルがあり、どのような仕事内容と働き方をしたいのか、転職活動をする前に明確にすることが大切です。

医療機器のエンジニアに向いている人は?

人の健康や命にかかわる医療機器を扱うことに、やりがいや喜びを感じられる人が医療機器エンジニアに向いています。言い換えると、仕事に対するやりがいや喜び、使命感が不足していると、続けることが難しい仕事でもあります。

特に、サービスエンジニアは現場の医療機器を正常に動作させることが最大の仕事のため、定期的なメンテナンスは必須で、故障の予兆があれば修理や部品交換といった予防処置をとります。それでもトラブルが発生することはあり、至急現場に出向き、トラブルの原因を見つけて対処しなければなりません。逼迫した状況であればサービスエンジニアへのプレッシャーは特に大きく、そのようなストレスに負けない精神力も求められます。

機械や電気の知識を積極的に吸収したいエンジニアにとって、さまざまな先端技術が搭載されている医療機器の開発や生産、保守にかかわれることは大きなモチベーションになります。開発職では機械や回路の設計、プログラミング技術、生産調整など幅広い技術とスキルを学べ、キャリアアップや昇進、他分野へのキャリアチェンジなど、将来の可能性を広げることができます。

必要な資格や、役立つ資格は?

医療機器エンジニアが必ず取得すべき資格はありませんが、研究開発職では医療の知識や現場経験、電気・機械工学の知識が必要になります。また、取得していると有利なのが、医療機関で働く技術者が持つ臨床工学技士の資格です。これは国家資格で、大学や専門学校などで厚生労働大臣の指定する科目を修得し、国家試験に合格する必要があります。資格取得のハードルは高いですが、臨床工学技士は医療機器のスペシャリストと呼ばれ、病院内の医療機器の操作をはじめ、管理、保守、点検などを担当するため、開発研究の即戦力として重宝されます。

医療機器サービスエンジニアの場合、他分野のサービスエンジニア経験があるのが望ましいのですが、基礎的な電気や機械の知識があれば採用される可能性はあります。日々のメンテナンスやトラブル対応のために現場を回ることから、普通自動車免許は必須です。また、医療現場では医師や看護師、管理者と話す場面が多く、良好な関係性を構築するためコミュニケーションスキルが求められます。

さらに、英語力があれば有利になります。外資系メーカー製の医療機器のシェアが高いため、英語力があれば年収が高い傾向にある外資系への転職の選択肢が広がります。英語で書かれた論文や説明書を理解し、マネージャーやクライアントへの報告書を作成できるスキルがあれば、昇進や報酬アップにつながります。

医療機器エンジニアのキャリア形成

医療機器の研究開発エンジニアのキャリアプランとして考えられるのが、プロジェクトマネージャーやスペシャリストへのキャリアパスです。プロジェクトマネージャーは開発プロジェクトの進行管理が主な仕事で、これまで培ってきた技術とマネジメントスキルを活用し、プロジェクトを成功に導きます。チーム内の意見を吸い上げてまとめるヒアリングとコミュニケーションのスキルに加え、決断力が求められます。特定の分野で高い専門性を持つスペシャリストは、得意分野の技術や知識を追求できるメリットがあり、好奇心が旺盛で学習意欲が高く、継続力のある人に向いています。

また、近年は臨床工学技士が一般企業の転職マーケットに流れるトレンドが見られます。医療機器のスペシャリストとして医療機関での勤務経験があるため、医療機器メーカーにとっては即戦力となるスキルと知識を備えています。研究開発だけでなく、適性によっては営業やサービスエンジニアなどでの活躍が期待されます。

医療機器エンジニアとして働く先輩の声

医療機器エンジニアのキャリア事例をご紹介します。

メイテックの鈴木雄大氏は、幼い頃に人の命を救う医師を目指していましたが、学校で学ぶ内に電気や情報の分野に興味を持つようになり、大学は電子情報工学科を選択。入学後の研究室紹介で医療機器をテーマにした研究室があることを知り、「夢だった人の命を救う仕事に、エンジニアとして関われるのではないか?」と考え、医療機器メーカーのエンジニアを目指すことにしたそうです。そして、新生児向けの保育器や分娩台、診察台などを製造しているメーカーに就職し、回路設計やプログラミング、製造など、ものづくりの一連の流れを経験しました。

その後、「もっと患者さんに近い立ち位置で、直接役に立てる仕事をしたい」と考えるようになり、MRI装置の保守、点検、故障対応を行う、フィールドエンジニアにキャリアチェンジしました。

これらの業務を経験し、医療機器の評価業務から、回路設計、プログラミング、仕様検討、製造に携わることで幅広い技術とスキルを学び、フィールドエンジニア時代はハードな業務をこなしながらコミュニケーションスキルが鍛えられ、その後のキャリアの基礎を築いたと言います。

医療機器一筋のキャリアからの変化。リチウムイオン電池やセルロースナノファイバーなど、未経験の技術へ挑戦できる「プロエンジニア」の働き方___メイテック 鈴木 雄大氏

まとめ

医療機器エンジニアは人の健康や命にかかわる職種のため、社会的意義があると同時に、重責がかかる仕事でもあります。それだけに仕事内容は厳しく、納入先である医療機関への丁寧なサポートや、常日頃から医療や技術の最新情報の収集に努めなければなりません。その見返りが医療従事者や患者、家族からの感謝の気持ちで、そこにやりがいを感じるエンジニアも多いはずです。

人の健康や命を守ること以外にも、医療機器エンジニアとして働くことで、最先端技術を習得できる大きなメリットがあります。また、医療業界は景気に左右されない強みがあることに加え、医療機器の需要は今後も着実に伸びることが確実視されています。安定した環境でエンジニアとして成長できる業界なので、転職を考えているエンジニアはチャレンジしてみてはいかがでしょう。

医療機器の仕事に興味のある方は、ぜひメイテックグループにお問い合わせください。

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自分の頭で「考える」ことがエンジニアの仕事の本質。包装設計、医療機器設計、プロセス開発で価値を提供し、さらに新しい領域へ挑戦したい──メイテックフィルダーズ 志村 朋之氏

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非感染性疾患による死亡率を3分の1減少させることを目指し、ポータブル医療機器でバングラデシュの人々へ質の高い医療を提供――コニカミノルタ株式会社

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