強制的な満腹感――MIT、減量に効果的な胃内バルーンを開発

Credits:Image: Courtesy of the researchers

胃内バルーン留置術は、空気や生理食塩水で満たされたシリコン製バルーンを胃の中に留置し、満腹感を与えることで過食を防ぐ減量法だ。しかし、胃が満腹感に慣れると、この効果は薄れてしまう。この問題を解決するために、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、必要に応じてバルーンを膨らませたり縮ませたりする新しい胃内バルーンを開発した。

「OSIRIS(oscillating satiety induction and regulation intragastric system)」と名付けられたこの胃内バルーンシステムを留置した動物実験では、食事摂取量が60%減少することが確認された。研究成果は、『Device』誌に2024年12月3日付で公開されている。

生理食塩水を充填した胃内バルーン留置術は、アメリカで肥満治療として承認されている。減量の促進効果が認められているものの、その効果は一時的で、再び体重は増加傾向になる。そこでMITのチームは、食事の直前に一時的に満腹感を与えるシステムであれば、減量の効果が長期的に継続するのではないかと考えた。必要に応じて胃の中で膨張と収縮ができるデバイスを開発し、2つのプロトタイプを作製した。1つは膨張と収縮ができるバルーンで、もう1つはエラストマー製カバーで保護された4本のアームが外に広がり胃壁を圧迫するデバイスだ。

アーム型デバイスも効果的に拡張して胃を満たすことが認められたが、最終的にバルーン型の研究を進めることにした。バルーンの方がより均一に力を分散することができ、長期的な安全性の面でも優れている可能性があると考えたからだ。新しいバルーンは、従来の胃内バルーンと似ているが、腹部を切開して胃に挿入する必要がある。バルーンは膨張や収縮するために必要なポンプを内蔵した外部コントローラーに接続されている。バルーンの挿入は一般的な胃ろうを造る処置と似ているため、研究チームは長期的な体内留置の適合性にある程度自信を持っている。

ブタを用いた1カ月間の実験では、食事前にバルーンを膨らませることで摂取する食事の量が60%減少した。従来の胃内バルーン留置術では、体重減少には少なくとも6カ月間のバルーン留置期間が必要だ。研究チームは、OSIRISによる食事量減少が体重減少につながるかを確かめるために、より長期間の研究を予定している。

現在、肥満治療には胃の手術やGLP-1受容体作動薬などの薬物療法があるが、手術ができない患者や薬物にうまく反応しない患者もいる。これらの患者にとって、OSIRISは新たな肥満治療の選択肢になる可能性がある。

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