- 2025-1-14
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- 1段階方式, Advanced Science, Frontiers in Science, STH(Solar-To-Hydrogen energy conversion efficiency), グリーン燃料, ソーラー水素, ペロブスカイト系光触媒, 信州大学, 光触媒, 化石燃料, 天然ガス原料, 太陽光, 学術, 水, 水分解プロセス, 水素, 水素燃料
信州大学の研究チームが、太陽光を用いて水から直接的に水素を得る水分解プロセスとして、新しい光触媒によりシンプルな構造で大規模化が容易な低コストの手法を開発した。ペロブスカイト系光触媒Y2Ti2O5S2表面における水の分解において、水素と酸素を2段階で発生させたものであり、面積100m2のシート形状の実証装置を数カ月間作動させることによって、太陽光から水素への変換効率STH(Solar-To-Hydrogen energy conversion efficiency)が向上することを確認した。
研究チームの研究成果が2024年11月27日に『Advanced Science』誌に公開されるとともに、太陽光で水から直接的に製造するソーラー水素の技術開発に関する研究チームによる総説が、2024年12月3日の『Frontiers in Science』誌に掲載されている。
現在、水素燃料の多くは天然ガス原料から誘導されており、化石燃料を活用しない純粋なグリーン燃料とは言い難いのが実情だ。一方で太陽光をエネルギー源として光触媒による直接的な水分解を利用したソーラー水素の製造技術は、システム構造がシンプルかつ安価であり、大規模なプロセス展開が可能であることから注目を集めている。研究チームは、「光触媒を活用した水分解は、ソーラー水素の製造および貯蔵にとって理想的な技術として重要であり、高効率化を可能にする光触媒材料およびシステムの開発が、将来の実用拡大の鍵である」と説明する。
光触媒による水の分解において、最も一般的である単純な「1段階方式」では、太陽光から水素への変換効率が非常に低いという欠点があった。研究チームは、水素生成光触媒と酸素生成光触媒を組み合わせて、2段階の光励起を利用して水を水素と酸素に分解する「2段階Zスキーム方式」に着目し、ペロブスカイト系光触媒Y2Ti2O5S2表面において、助触媒である白金や酸化クロム(III)ナノ層の導入方法を工夫することにより、水分解における水素と酸素の発生を2段階方式とした。面積100m2のシート形状の実証水分解装置を構築し、野外で数カ月間作動させた結果、太陽光から水素への変換効率STHが向上し、最大0.76%に達することを確認した。
現段階で変換効率は未だ不十分であり、自然太陽光に含まれる短波長領域や長波長領域にも反応する光触媒など、もっと効率の高い光触媒材料を開発するとともに、より大きな反応装置による実証実験を通じて、ソーラー水素製造の効率向上および量産性や安全性の確認が必要であると考えている。「今後、量産技術やガス分離プロセス、インフラ建設分野も含めた多くの研究者が関わることにより、5%の目標達成は将来的に可能であり、安価で豊富な持続可能ソーラー水素をさまざまな用途に適用できる」と、研究チームは述べている。