12コア結合型マルチコアファイバーによる大洋横断級7280km伝送実験に成功 NEC、NTT

日本電気(NEC)は2024年3月21日、日本電信電話(NTT)と共同で、標準的な外径(0.125mm)の光ファイバーに光信号の伝送路を12本設けた12コア結合型マルチコアファイバーを用い、大洋横断級7280kmの伝送実験に、世界で初めて成功したことを発表した。今回の成果は、大容量光ネットワークを実現する次世代の伝送基盤技術として期待される。

既存の光海底ケーブルは、1本のファイバー内にコアと呼ばれる光伝送路を1本設けたシングルコアファイバーが用いられているが、標準的な外径からファイバーを変えずに複数のコアを設けて通信容量を増やすマルチコアファイバーを用いることで、ケーブルの大容量化を目指す研究開発が進められている。

標準的な外径の光ファイバーは、コアを増やしていくと、隣接するコアの光信号にコアから漏れた光信号が干渉して混信する。その結果、お互いの通信品質が劣化するクロストークが発生する。特に長距離の伝送では、クロストークの深刻化に加え、遅延や損失などで送信した信号を正確に受信することが困難になる。そこで、NECはアルゴリズムを、NTTは12コア結合型マルチコアファイバー光伝送路を開発した。

本成果の構成図と開発した技術

NECが開発したアルゴリズムは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を活用し、受信信号の復調を実現している。MIMO技術で、混信した多数の無線信号を分離する処理は、一般的に用いられているが、既存の光通信で実用化されているのは、2つの多重光信号(2偏波多重信号)までとなる。

開発したアルゴリズムは、長距離伝送に対応しており、24×24 MIMO(12コア×2偏波)に適用。高速な受信信号を正確に分離、復調できる。

マルチコアファイバーを用いた長距離の光通信では、多重光信号間の伝搬が遅延して不均一性が生じた場合、受信時のMIMO信号処理に必要な回路リソースが増え、実装や実現が困難になる。また、伝搬損失の不均一性が生じると、伝送できる距離が大きく制限される。

そこでNTTは、信号の遅延と損失の不均一性の影響を低減する12コア結合型マルチコアファイバーと入出力デバイス(接続ファンインファンアウト)の設計技術、長距離用光伝送路設計評価技術を開発した。

大洋横断級の光海底ケーブルを想定した7280kmの長距離伝送実験では、両社の技術を組み合わせ、世界で初めて12空間多重光信号のオフラインでの正確な復調に成功した。

標準外径の空間多重ファイバーを用いた長距離光伝送の動向と、本成果の位置づけ

今後、両社は研究開発を進め、長距離大容量光海底ケーブルシステムや、陸上コアネットワークシステムとしての実用化を目指す。

関連情報

NECとNTT、世界初、12コア光ファイバーによる7,000km以上の長距離伝送実験に成功 (2024年3月21日): プレスリリース | NEC

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る