バクテリアのナノワイヤーを利用して発電――タンパク質の湿度センサーを開発

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究チームは2024年4月29日、バクテリアが産生するタンパク質フィラメントであるナノワイヤーを利用し、空気中の水分から電気を発生させることに成功したと発表した。研究成果は、『Small』誌に2024年4月10日付で公開されている。

今回の成果は、タンパク質工学とナノエレクトロニクスを融合させた学際的研究によるものだ。持続可能で環境に優しい電気部品や電気デバイスを開発する可能性を開くものであり、将来的にエネルギーハーベスティングや生物医学的応用、環境センシングの革新につながる可能性があると研究チームは述べている。

電気は電子が原子間を移動することで発生するが、自然界でも光合成のように電子の動きを必要とする事象は多くある。バクテリアもナノワイヤーと呼ばれる導電性のフィラメントを利用して、膜を超えて電子を移動させている。

電気を通すバクテリアのナノワイヤーは、生きた細胞などの生物学的システムと相互作用できる可能性があり産業的応用に魅力的だ。しかし、天然のナノワイヤーを改変することは難しく、機能性にも限界がある。

そこで、研究チームは遺伝子工学の手法を用いて、大腸菌を使ってファイバーを作製した。近年の研究で、鉄とポルフィリンからなる錯塩であるヘム分子を密接に配置すると、電子伝達が可能になることが示唆されている。研究チームはヘム分子が近くにあれば電子がヘム分子間を飛び移れるのではないかと考え、ファイバーの導電性を高めるために大腸菌が作るフィラメントにヘムを組み込んだ。

予想通り、フィラメントにヘムを組み込むとタンパク質は導電性を示すようになった。しかし、ここでさらに驚く結果が示された。湿度20~30%の環境条件下では、電流がより強くなったのだ。湿度により物質に不均衡な電位が生じ、印加しなくても電流が発生することが明らかとなった。

フィラメントが湿度に反応することを発見すると、研究チームは息を吹きかけるだけで電流が流れる湿度センサーを開発した。

大腸菌が作るタンパク質の特性は、ヘムの構造やフィラメントの周辺環境を調節することで調整可能だ。現在、研究チームは感光性など材料の特性を変えるための研究を進めている。

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Bacteria ‘nanowires’ could help scientists develop green electronics

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