- 2021-10-19
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- NTT, バン・アッタ・アレー, モノポールアンテナ, 再帰反射アレー, 双方向通信, 指向性制御, 東京工業大学, 無線通信, 高周波帯
NTTは2021年10月18日、東京工業大学と共同で、再帰反射アレーを応用することでアンテナ指向性制御が不要となる双方向無線通信に成功したと発表した。
ミリ波やテラヘルツ波などの高周波帯を用いる無線通信では、信号の伝搬損失が大きいために、アレー化した多素子アンテナの各素子の位相を制御して指向性を形成し、通信相手に対して常に指向性の最良の方向を実現するための制御が必要になる。
今回同社らは、電波が到来する方向に対して特に制御しなくてもアンテナ指向性を形成し、電波を入射方向に反射する特徴を持つ再帰反射アレーに着目。その特徴を活用して、従来無線基地局に必要な電波の到来方向の推定機能やアンテナ指向性制御機能を不要にする可能性を研究した。
具体的には、再帰反射アレーの一種で、小型で構成が簡易な「バン・アッタ・アレー」を用いた。同方式での通信では、無線機(A)から他方の無線機(B)へ情報を送る一方、その情報に無線機Bが再帰反射の過程で情報を重畳することで無線機Aへ情報伝送できる。無線機Aでは自らが送信した情報を除去することで、無線機Bから伝送された情報のみを取り出すことができる。
今回実際に3×4素子のモノポールアンテナによるバン・アッタ・アレーを試作。上記の原理で無線機間で情報の復元ができることを実験により確認した。同社によるとバン・アッタ・アレーによる双方向通信は世界初となる。
今回の研究成果により、今後アンテナ指向性制御のための信号処理や制御機構を不要にできれば、無線装置の簡易化や低消費電力化につながることが期待できるという。今後はさまざまな無線装置への応用に向けた装置などの実用化研究を進める予定だ。