二酸化炭素を吸収し同時に強度も高める、コンクリート3Dプリント法を開発

Credit: Uve Sanchez/ Unsplash

建設業界は、セメントへの大きな依存が原因で大量の二酸化炭素(CO2)を排出しているが、これは世界全体のCO2排出量の約8%を占めている。今回報告されたコンクリート3Dプリンティング技術は、セメントの製造工程など、産業分野で発生するCO2を蒸気と共に取り込んでコンクリート内に固定化するもので、コンクリートの強度を向上させるとともに、環境負荷も軽減できる可能性がある。

シンガポールの南洋理工大学(NTU:Nanyang Technological University)の研究チームは2024年12月18日、この建設業界の環境への負荷を減らすための、新たなコンクリート3Dプリンティング技術を開発したと発表した。同技術では、CO2をコンクリート内に固定することでCO2排出量の削減と、コンクリートの強度向上を同時に実現することを目的としている。

研究チームが考案した3Dプリンティングシステムでは、CO2ポンプと蒸気を吹き付ける装置が3Dプリンター本体に取り付けられている。コンクリートの押出成形時にCO2と蒸気を混合することで、CO2がコンクリート内部で吸着/固体化し、長期間にわたって固定される。また、蒸気を利用することでコンクリートがさらにCO2を吸収しやすくなり、機械的強度も向上することがわかった。

実験の結果、この技術で作られたコンクリートは、従来のCO2吸収型3Dプリンティング法で形成されたコンクリートに比べて圧縮強度が最大36.8%、曲げ強度が最大45.3%、プリンティングの効率性が約50%向上し、CO2の吸収量も約38%増加した。コンクリート押出成形3Dプリンティングシステムで、CO2と蒸気を同時に取り込むことの利点を実証する結果となった。

NTUの研究者たちは、この技術が建設業界におけるCO2排出削減に大きく貢献すると期待している。この技術を使えば、発電所や工場から排出されるCO2や蒸気を利用して、より環境に配慮した建築物を作ることが可能になる。研究チームのリーダーであるMing Jen Tan教授は、「新たに開発した3Dプリンティングシステムは、コンクリートの機械的特性を向上させるだけでなく、建設業界の環境への影響を低減することにも貢献し、CO2排出量の削減が実現できる」と語っている。

今後の研究では、3Dプリンティング技術のプロセスを最適化し、さらに効率を高め、純粋なCO2の代わりに産業界からの排出ガスを使用することを検討している。関係者は、この技術が普及すれば、持続可能な建築と地球環境保護が一層進展すると期待している。

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