電波の方向を変える透明メタサーフェス屈折フィルムを開発――既存の構造物に貼り付けるだけ 京セラ

京セラは2025年1月25日、電波の進行方向を自由に変えられる透明メタサーフェス屈折フィルムを開発したと発表した。窓ガラスやアクリルスタンドなどに貼り付ければ、景観などの邪魔にならず、高い周波数を用いたミリ波5Gや6Gなどのサービスエリアを拡大できる。

5Gで用いられているミリ波(28GHz帯)や、6Gの実用化に向けて検討されている高い周波数帯の電波は直進性が強く、障害物のある場所では通信が安定しないという課題がある。そこで同社は、基地局からの電波の進行方向を曲げることができるメタサーフェス屈折板の開発に取り組み、2022年には板状の屈折板を開発している。

新たに開発したフィルム状の屈折材は、接着層、メタマテリアル層、保護層からなり、厚みは約200μmに抑えた。電波屈折率は基板タイプの屈折板と同レベルで、窓やアクリルスタンドなどの既存の構造面に貼り付けるだけで、電波の中継点となる。

(左)開発品外観 (右)屈折フィルムの層構成

メタマテリアル層内の導体には透明電極を使用し、可視光透過率の測定値は80%以上と、高い透明度を実現した。このため、構造物のデザインにも影響を与えず、視覚の邪魔にもならない。フレキシブルな特長を生かして曲面にも貼り付けられる。

また、フィルム構造のため、好きな大きさや形にカットでき、並べて貼り付けることで電波の到達範囲を広げられる。屈折角度は0~60°で、サイズや屈折角度の異なるフィルムを組み合わせれば、ビーム設計も自由にできる。

屋内に設置されたミリ波(28GHz帯)5Gの環境を用いて、屈折フィルムの効果を確認する試験を行ったところ、屈折フィルムの貼り付け前後でダウンリンクの伝送速度が最大で2.7倍、アップリンクでは5.2倍に向上した。

同社は、この屈折フィルムを2025年3月3日~6日まで、スペイン・バルセロナで開催される通信技術関連展示会「Mobile World Congress Barcelona 2025」に出展する。

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