- 2025-3-13
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- GaN-HEMT, GaN層, JST, PCD基板, 住友電気工業, 多結晶ダイヤモンド, 多結晶ダイヤモンド基板, 大阪公立大学, 科学技術振興機構, 窒化ガリウムトランジスタ

住友電気工業は2025年3月11日、大阪公立大学とともに、科学技術振興機構(JST)の共同研究プロジェクトにて、2インチの多結晶ダイヤモンド(PCD)基板上で窒化ガリウムトランジスタ(GaN-HEMT)を作製したと発表した。移動体通信、衛星通信分野での基幹デバイスの大容量化、低消費電力化を実現する重要なステップとなる。
高周波デバイスであるGaN-HEMTは、さらなる高周波化、高出力化が求められているが、動作時の自己発熱でデバイスの出力が制限されることで、通信の性能や信頼性が低下してしまうという課題がある。大阪公立大学はこれらに対処するため、GaN-HEMTの基板として熱伝導率が極めて高いダイヤモンドを活用し、放熱特性を向上させた。
ダイヤモンドの熱伝導率は、一般的にGaN-HEMTの基板に使用されるシリコン(Si)の約12倍、炭化ケイ素(SiC)の約4~6倍と優れた特性を持つため、基板として利用することで熱抵抗をそれぞれ4分の1、2分の1に低減できる。

Si、SiC、ダイヤモンド上に作製したGaN HEMTの放熱性の比較(同じ印加電力に対して温度上昇が小さいほど、放熱性に優れている)
これまでは多結晶ダイヤモンドの粒径が大きく、表面粗さ(5~6nm)も悪いため、はんだや接合材を使用しない窒化ガリウム(GaN)層への直接接合が困難とされていたが、住友電工のダイヤモンド基板研磨技術で表面粗さを従来の2分の1に抑えた。これに、Si基板から多結晶ダイヤモンド上にGaN層を移行させる大阪公立大学の技術を統合し、GaN層を2インチの多結晶ダイヤモンド上に直接接合することに成功した。
これにより、多結晶ダイヤモンド上へのGaN構造の実現と放熱特性の均一性を実証した。今後、量産化に向けた4インチ基板で、デバイス性能や接合状態の調整などを開発していく。
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