- 2024-1-24
- 技術・スキル市場分析, 機械系, 転職・キャリアアップ
- 3D CAD, CAD(Computer Aided Design), CAE(Computer Aided Engineering), ソフトウェアエンジニア, 機械設計, 理工系人材需給状況に関する調査結果概要, 製造業
「機械設計者が転職するには、どんなルートがあるんだろう」
「機械設計者の転職を成功させるには、どんなことに気を付けたらいいのだろう」
「そもそも機械設計者の転職事情ってどうなんだろう」
こんな疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?
本記事では次の内容について、機械設計者として10年以上働いている筆者が分かりやすく解説します。
・機械設計者のキャリア概要
・機械設計の転職市場動向
・機械設計者のよくある転職ルート
・機械設計者の転職を成功させるポイント
近年は、35歳以上になると転職できなくなるという「35歳限界説」も無くなったと言われており、ミドル年齢層以上の転職も増えています。また、人手不足の業種としてソフトウェアエンジニアが目立ちますが、実は機械設計者も人手不足として上位にあります。
機械設計は、製造業に厚みのある日本においては需要があり、無くならない仕事と言えるでしょう。転職を検討している機械設計者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
機械設計者のキャリア概要
機械設計の仕事内容について
機械設計者とは、新しい機械を設計し、既存の機械を改良する専門家です。機械設計の仕事は、新しい機械のアイデア発案から詳細設計、製造、テスト、そして最終的な製品の量産立ち上げ支援まで、製品開発のライフサイクル全体をカバーしています。
製品開発の全体に関わることが多いため、その仕事内容は多岐にわたります。その分、繁忙期の業務量の多さや、製造部門など多くの人との関わりが大変なこともあります。しかし、自身が関わった製品がお客様のもとで無事動き、お客様に感謝されたときは、技術者・ものづくりエンジニアとして大きな達成感を得ることができるでしょう。
機械設計の仕事の流れは、おおまかに次の3つです。
1.設計
まずは製品の要件を理解し、それに基づいて設計案を作成します。
次に、その設計が機能的かつ製造可能であることを確認するために、さまざまな設計計算を行います。近年ではCAE(Computer Aided Engineering)と呼ばれる解析ツールを用いて、強度・熱・流体などの計算をコンピューターで行う手法が多用されています。
そして、製品の設計図となる図面を作製し、製造部門に渡します。図面は、CAD(Computer Aided Design)というソフトウェアを使って、PCで作製する場合がほとんどです。
2.評価試験
製品が製造されたら、機械が要件通りにつくられているか性能をテストします。ここのテストは評価試験、性能試験などと呼ばれています。
評価試験の結果、必要に応じて改善点を挙げ、設計を見直し、図面を改版させ、次のバージョンの製品を設計します。
3.量産立ち上げ
評価試験で改善点を挙げ、製品の改良を反映させれば、いよいよ製品が量産されるフェーズとなります。
機械設計者は製造部門と連携して、つくりやすい製造手順や組み立て方を議論します。また、量産立ち上げ時にトラブルがある場合は、製造部門と一緒になって解決策を議論します。必要に応じて設計を変更し、トラブルが解決できるように図面を改版します。
機械設計者のキャリアについて
ここでは、一人の機械設計者が経験に応じてどのような仕事をしていくのか、最も多いであろうキャリアパスを紹介します。
1.機械設計として実務を担当
キャリアの初期段階では、機械設計者は通常、経験豊富なエンジニアの指導の下で働きます。彼らの多くは、まずは製品の一部の設計を担当することから始まります。この段階では、実務を通して設計の基本的なスキルを磨き、業界の知識を深めることが重要です。
経験を積むにつれて、機械設計者はより複雑なプロジェクトを任され、チームをリードするようになります。彼らは新製品の開発を主導し、製造プロセスを改善するための戦略を立てます。
2.マネージャーや上級エンジニアへの昇進
機械設計の実務担当者として経験を積むと、機械設計者はマネージャーや上級エンジニアの役職に昇進する機会が与えられます。
マネージャーは、機械設計の部や課を統括するリーダー(いわゆる部長、課長)となり、部門の方針決定、日々の運営、各プロジェクトの軌道修正、部門メンバーの人事評価などを行います。マネージャーは製品を直接設計する作業には関わらないことが多いですが、部門メンバーの機械設計者が書いた図面を承認します。図面の承認のために、設計について部門メンバーと議論することがあります。そのため、機械設計の経験は必要となります。
上級エンジニアは、専門知識を活用して技術の観点から自部門の方針決定に関わり、自社に必要な技術を開発・追及するという役割を持っています。また、これまでの機械設計業務で培ってきた高い専門性を活かし、教育者や社内コンサルタントとしての役割も持ちます。次世代のエンジニアの育成や、企業が技術的な課題を解決するのを助けるのも、上級エンジニアとしての重要な役割です。
機械設計の転職市場動向
結論から言えば、将来的に機械設計者は不足することが予想されています。その分、機械設計者の転職はキャリアアップのチャンスと言えるでしょう。ただし、転職者にとって良い条件の多寡は景気動向に大きく左右されます。景気が良く、企業の求人が増えているときが転職のチャンスと言えます。
企業は機械設計者を求めている
経済産業省が平成30年(2018年)に公開した「理工系人材需給状況に関する調査結果概要(平成30年4月20日 経済産業省)」では、社会人と企業を対象に、理工系人材の需給実態の調査を行っています。
これによると、企業を対象に調査した「5年後技術者が不足すると予想される分野(p14)」では、機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)が最も多く12.4%となっています。
このデータから、企業は機械設計者を求めており、その分機械設計者の転職の余地は大きいと言えます。
同調査で、5年後技術者が不足する理由としては、次の4つが上位となっています。
・他社が当該分野の採用数を増やしているため
・業界や自社の認知度が低く集まらないため
・当該分野で学んでいる学生が少ないため
・団塊の世代等の退職・離職のため
上記の他に、IT系やソフトウェアエンジニアを志望する理工系の学生が増えていることも、要因の一つだと筆者は考えています。
企業は機械設計者を求めているが、その需要が追いついていないことがデータで分かります。機械設計者にとっては、転職のチャンスは増えていると言えます。
転職のタイミングは、景気動向に注意
一般的に、待遇の良い企業に転職するためには、景気動向が転職のタイミングを決める重要な要素です。
景気が良い時期は、企業が新しいプロジェクトを始め、新しい人材を求める可能性が高まります。その分、待遇の良い企業の求人の絶対数も増えます。
実際、筆者の周りで転職した人が多かったのは、2017年~2018年ごろの比較的景気のいいタイミングでした。
企業がより人材を求める好景気時は、機械設計者にとって転職のチャンスと言えます。
機械設計者の転職ルート
ここでは、機械設計者のよくある転職ルートを紹介します。
同業他社への転職
例えば、自身が自動車部品メーカーの機械設計であれば、他の自動車部品メーカーに転職する、というルートです。
同業他社への転職は、現職のスキルが転用しやすい、転職先での働き方がイメージしやすい、というメリットがあります。今の業種での機械設計の仕事は好きだが、給与面・福利厚生面の待遇を上げたい、という方にはこのルートが向いていると言えます。
成長産業への転職
今市場が伸びている産業へ機械設計者として転職する、というルートです。例えば、自動車部品メーカーの機械設計者が半導体製造装置メーカーに転職する、という事例が挙げられます。
同じ機械設計でも異業種への転職となりますが、前述した通り企業の機械設計者のニーズは高いです。また、機械設計の基本的なスキル(3D CADを使った設計や、問題解決の考え方)は製造業共通の考え方です。新しい製品に関わりたい、これから成長する分野で活躍したい、という方にはこのルートが向いていると言えます。
技術者派遣会社への転職
技術者派遣会社では多くの技術者が派遣先で働き、活躍しています。機械設計者においては、例えば次のようなものがあります。
・機械製図業務:CADを使って部品図や組立図の製図を行う。
・評価試験:機械の性能を評価するため、さまざまな条件で評価試験を行う。
派遣技術者はさまざまな派遣先の企業で働くため、一つの会社に偏らずスキルアップしていけるという魅力があります。
派遣技術者の方のインタビュー記事を紹介します。複合機や自動車部品など、さまざまな製品・業務を担当したエンジニアのキャリアが詳しく紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。
参考記事
やりたい仕事・製品が決まっていないからこそ、派遣エンジニアの道を選択。監視装置、複合機、自動車部品と、製品、業務の幅を広げたエンジニアキャリア──メイテックフィルダーズ 西島 大貴氏 |
機械設計者の転職を成功させるポイント
機械設計者の転職を成功させるために、転職前に重要なポイントと、転職後に重要なポイントがあります。ここでは、元同僚や知人の体験談や、筆者自身の経験をベースに、そのポイントを述べます。
転職前に重要なポイント①:転職理由をしっかり掘り下げる
転職を考える際、その理由を深く理解することが重要です。自分が何を求め、現職の何が不満であるのかを明確にすることで、次の職場選びに役立ちます。
面接時に転職理由を説明する際にも、具体的で説得力のある答えがあると、企業と求職者のマッチング可能性が上がり、お互いに納得できる転職がしやすくなります。
転職理由の掘り下げには、第三者からのアドバイスも有効です。転職支援サポートやキャリアコンサルトの面談を通じて、「自分はなぜ転職したいのか」「自分の機械設計者としての強みは何か」を深く考えていきましょう。
転職後に重要なポイント①:新しいことを常に学ぼうとする姿勢を忘れない
転職先の会社では、新しいことを常に学ぼうとする意識を持つことが大事です。会社では、仕事を進めるにあたっての会社ごとのルールがあります。そのルールを早く覚えることは、転職先で仕事を進めるために重要です。
機械設計の分野自体は成熟しているため、ベテラン技術者が新しいことを覚える機会は少ないです。だからこそ、転職先の企業では「成熟した機械設計の仕事であっても、新しいことは積極的に学ぶ」という姿勢が大事になってきます。
転職後に重要なポイント②:コミュニケーションを前職以上にしっかり取るように意識する
転職後は新しい環境に適応する必要があります。そのため、積極的にコミュニケーションを取り、新しい職場で関係性を築くことが重要です。また、仕事を進める上での前提条件が企業や職場によって違うことがあります。転職してしばらくは、この前提条件をきっちり揃えるために、意識して関係者とコミュニケーションを取るようにしましょう。
まとめ
この記事では現役の機械設計者が機械設計者の転職について、次の内容を解説しました。
・機械設計者のキャリア概要について
・機械設計者の転職市場動向について
・機械設計者の転職ルートについて
・機械設計者が転職を成功させるポイントについて
近年、日本の製造業の国内回帰や労働人口の減少というトレンドから、製造業においては働き手の中長期的な不足が課題となっています。
特に、機械設計は今後技術者が不足すると予想される分野の上位にあり、需要が供給を上回っています。機械設計者を求める企業は多く、機械設計者の転職は今後増えていくと予想できます。
メイテックネクストでは、機械設計者を含むエンジニアに特化した、無料の転職支援サポートを実施しています。エンジニア転職のプロがあなたのキャリアを深く分析し、専門的なアドバイスを交えて転職のお手伝いをいたします。お気軽にお問い合わせください。
エンジニア専門の転職支援会社
メイテックネクスト