- 2025-1-10
- 化学・素材系, 技術ニュース
- AFM, ダイヤモンド, ダイヤモンド薄膜, プラズマCVD, 原子スケール, 原子間力顕微鏡, 東京大学, 炭素原子, 産業技術総合研究所, 産総研, 研究, 第一原理計算, 高品質ダイヤモンド薄膜成長技術
東京大学の研究グループは2025年1月8日、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、ダイヤモンド表面を原子レベルで観察する技術を開発したと発表した。原子間力顕微鏡(AFM)を用い、世界で初めてダイヤモンド表面の個々の炭素原子の可視化に成功している。
研究グループは、超高真空環境で動作するAFMを用いて、ダイヤモンド表面の個々の炭素原子を可視化した。研究では試料として、産総研のプラズマ化学気相堆積(CVD)による高品質ダイヤモンド薄膜成長技術を駆使して作製したダイヤモンド(001)面を用いた。
AFM観察は、活性なシリコンの探針を用いて実施した。表面に探針を接近させて観察すると、個々の炭素原子が観察できた。このAFMを用いた技法により、ダイヤモンド表面の点欠陥が分析できるようになった。
ダイヤモンド表面の個々の炭素原子が可視化される機構は、物性研究所でOpenMXによる第一原理計算によって明らかにした。ペアを組んだ炭素原子は、探針と結合を作る余地がある。ダイヤモンド表面のモデルにシリコンからなる探針のモデルを接近させた結果、実験で検出された炭素原子からの強い信号を再現した。
ダイヤモンドは究極の半導体として、パワーデバイスや量子デバイスの材料となることが期待されている。微細加工技術で作製される微小なデバイスであるほど、デバイス性能に原子レベルの欠陥が及ぼす影響が無視できなくなるため、デバイスの性能向上には、原子スケールでダイヤモンド表面を評価する必要がある。
しかし、ダイヤモンドの導電性が低いことや表面の炭素原子が密集していることなどから、ダイヤモンド表面を個々の炭素原子まで識別するレベルまでは可視化できていなかった。
研究の成果により、原子スケールのダイヤモンドの分析への道が開けた。今後、ダイヤモンド薄膜の成長機構の解明や、ダイヤモンドデバイスの性能向上への貢献が期待できる。