ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの正味最高熱効率50%超を「産産学学連携」で実現――燃焼、摩擦、ターボ過給、熱電変換の技術を統合

正味最高熱効率50%超を達成した技術の概要

科学技術振興機構(JST)は2019年1月16日、トヨタ自動車、慶應義塾大学、京都大学、東京大学、早稲田大学による共同研究で、乗用車用のガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方で、正味最高熱効率50%を上回ることに成功したと発表した。

現在の乗用車用エンジンの熱効率は40%程度で、30%だった1970年代から、40年以上かけても10%しか向上していない。その背景には、エンジンの燃焼現象が極めて複雑かつ高速で、その科学的な解明が難しいという問題があった。さらに、エネルギー損失を低減する技術も必要とされ、摩擦により損失するエネルギーを減らす技術や、排気として放出されるエネルギーを利用するターボ過給や熱電発電といった技術も必要とされる。

そこで、研究グループは、ガソリン燃焼とディーゼル燃焼の高効率化、そしてエネルギー損失低減に関する研究を統合。ガソリンエンジンでは51.5%、ディーゼルエンジンでは50.1%の正味最高熱効率を達成することに成功した。

正味最高熱効率50%超達成の推移

ガソリン燃焼の高効率化については、従来の点火技術だと着火しにくく燃焼が安定しない超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)を、新たな点火技術を開発することで実現。熱効率向上に成功した。

ディーゼル燃焼の高効率化については、エンジン燃焼室の壁近くでの火炎の滞留や後燃えによるエネルギー損失や仕事への変換効率の低下を、燃料噴射技術を開発することで解決。これにより、火炎が壁から離れて配置され、かつ後燃えを低減する高速空間燃焼を実現し、熱効率向上に成功した。

エネルギーの損失低減については、エンジンの摺動表面に低摩擦機能を付与することで機械摩擦損失の55.5%低減を実現した。また、排気エネルギー有効利用のため、流路を新たに設計するとともに、伝熱と軸受での摩擦を考慮したターボ過給機システムを構築。従来製品の効率を10ポイント以上上回る、最大69%程度の効率値を実証した。さらに、発電温度域を中低温に拡大できる新たな素子およびモジュールを開発。最大1.3%程度の熱効率相当の性能があることも実証している。

今回の成果は、今後数十年間は主流と予測されている内燃機関を搭載した自動車による環境負荷を低減し、二酸化炭素排出量の削減に貢献できるという。また、燃焼分野の基礎科学を発展させると同時に、産業競争力の強化をもたらすとしている。

なお、これらの成果は複数の企業と大学が連携する「産産学学連携」で得られたもので、プロジェクト終了後もこの体制を持続させる取り組みを産学が開始しているという。

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