スピーカーの振動に反応して動く体長2mmの超小型ロボット

ジョージア工科大学の研究チームは、3Dプリント技術を利用して、体長わずか2mmとアリサイズの超小型ロボット「マイクロブリストルボット」を開発した。硬い毛(ブリストル)のような足をもち、圧電型シェーカーや超音波、小型スピーカーからの振動を利用して動くもので、研究結果は2019年7月9日付けの『Micromechanics and Microengineering』に掲載されている。

開発したロボットは、大きさ2×1.87×0.8㎜、重さ約5mg。2光子重合リソグラフィ(TPP)を使って3Dプリントしたポリマー製ボディに、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)製ピエゾアクチュエータを取り付けた。振動を受けると共振により足が上下に動き、推進力に変換される。振動の振幅はロボットの動く速さを制御し、最高で1秒間に体長の4倍(8mm)ほど移動できる。

マイクロロボットの制御には磁場を利用する方法もある。しかし、複数のロボットを同時に動かすには有効だが、個々のロボットを動かすのはたやすいことではない。一方、Azadeh Ansari助教授率いるチームが開発したロボットは、足のサイズや角度、形状などを変えることで、1つ1つ異なる振動周波数に応答するように設計することができる。研究チームが理想的な構造を求めて作製したロボットは、4本足や6本足など何百個にも及ぶ。

ピエゾアクチュエータの性質を利用すれば、外部から振動を受けてオンボードセンサーに電力を供給するロボットとして使うこともできる。「我々は機械、電子工学、生物学、物理学を融合した研究を行っている」とAnsari助教授は語る。

さらに、ロボットに方向変換機能を追加する研究も進めている。振動周波数がわずかに異なる2つのロボットをつなげて振動周波数と振幅を調整すれば、ロボットを操縦できる可能性がある。「操縦可能なマイクロロボットが実現すれば、面白い使い方が次々と思い浮かぶでしょう」と論文の筆頭著者であるDeaGyu Kim氏は語る。

さらに研究チームは、アリの大きさだけでなく、その集団行動からも知見を得ようとしている。複数のマイクロロボットが動き回ることができる「遊び場」を設け、今後何ができるか検討している。ジャンプしたり泳いだりできるマイクロロボットの開発にも興味を持っている。

TPPプロセスに時間がかかるなど、量産化に向けてはまだ課題はあるが、将来マイクロブリストルボットの群れが、環境の変化を検知したり、物を動かしたり、さらには体内でけがの治療をする日が来るかもしれない。

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