帝人グループで炭素繊維・複合材料事業を展開する東邦テナックスは2018年2月15日、同社が航空宇宙用途向けに展開する高強度・高弾性率の炭素繊維と、カーボンナノチューブ(CNT)との複合により、高い弾性率と耐衝撃性を両立するプリプレグを開発したと発表した。
プリプレグは炭素繊維複合材料(CFRP)の中間材料として使用され、航空機や自動車、インフラなど多岐にわたる用途で採用が拡大している。CFRPに求められる特性は用途により大きく異なるが、成形品が衝撃を受けた際などに炭素繊維シートから樹脂が剥離し、弾性率などの物性が低下することが問題となっていた。炭素繊維と樹脂の剥離を防止する一つの方法として、炭素繊維とCNTの複合化の研究が進められているが、CNTは分子同士の結束が強く樹脂内で均一に分散しにくいため、プリプレグの品質が安定しないという課題があった。
今回同社が開発したプリプレグは、特殊な表面処理により分子を分散させたCNTを樹脂に添加し、その樹脂を同社が航空宇宙用途向けに展開する炭素繊維に含浸させたものだ。炭素繊維とCNTの複合により、このプリプレグを用いて成形したCFRPは弾性率や耐衝撃性が向上し、またCNTが均一に分散することで炭素繊維と樹脂の剥離が抑制されるため、耐久性も向上したという。
今後帝人グループは、開発した高弾性・高耐衝撃性プリプレグの用途開発を加速し、ハイエンドスポーツレジャー分野や航空機分野などでの採用拡大を図るとしている。