グラフェン超伝導材料の原子配列を解明――薄くて柔らかい、原子スケールの2次元超伝導材料の開発に新たな道 東大ら

東京大学、早稲田大学、日本原子力研究開発機構、高エネルギー加速器研究機構の研究グループは2019年11月14日、これまで未解決だった超伝導を示す炭素原子層物質グラフェンとカルシウムの2次元化合物の原子配列を「全反射高速陽電子回折法(以下、TRHEPD法)」という実験手法を用いて、世界で初めて解明したと発表した。

グラフェンは原子配列が非常に安定しており、高い柔軟性を持つこと、熱伝導や電気伝導などの物理的性質が優れていることから、基礎/応用の両面から着目されている。さらに最近では、グラフェンに電気抵抗がゼロになる超伝導を発現させる試みも行われており、2016年にはシリコンカーバイド(SiC)基板上に作った2枚のグラフェンの層の間にカルシウム(Ca)原子を挿入した化合物(以下、SiC上Ca挿入2層グラフェン)において超伝導が発現することが報告され大きな注目を集めた。

超伝導が発現する仕組みを解明するには、その結晶構造を正確に知る必要があるが、SiC上Ca挿入2層グラフェンの正確な原子配列はこれまでわかっていなかった。今回の研究では、TRHEPD法という試料最表面の原子配列の情報を高感度で検出できる実験手法を用いて、SiC上Ca挿入2層グラフェンの原子配列を明らかにすることを試みた。その結果、これまで信じられてきた原子配列とは異なり、グラフェンとバッファー層の間のみにCa原子が挿入されていることを初めて明らかにした。研究グループは、この試料の電気伝導度が温度によってどのように変化するかについても測定し、この原子配列が電気抵抗がゼロになる超伝導現象を示すことも明らかにした。

今回の研究によって、2次元物質の原子配列を解明することが超伝導特性の理解に役立つことが示された。また研究結果から、SiC上の単層グラフェンでも超伝導が発現する可能性が極めて高いことがわかった。単層グラフェンでは、電子が光のように高速で動くことができるという特性を持つため、この性質と超伝導を組み合わせることで、エネルギー損失ゼロの超高速情報処理ナノデバイスなどに向けた材料開発への応用が期待できるとしている。

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