AIに関する求人ニーズ――市場としては黎明期[AIでSociety5.0を実現する]

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

メイテックネクスト 東京CA部部長 梅津太一氏(右)、同社募集企画グループ 湯澤大和氏(左)

~Society 5.0で何が変わるのか。「人工知能」が当たり前になる世界で、エンジニアに何が求められるのか~

本記事は、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストの代表取締役社長 河辺真典氏への取材を通じて、人工知能(AI:Artificial Intelligence)の最新事情をお伝えしていく連載記事です。

第1回目は「日本におけるAI開発の現状と課題について」、第2回目は「AI開発で求められているエンジニアとは」と題して、河辺氏にお話を伺いました。最終回となる今回は、メイテックネクストに寄せられる求人情報なども踏まえ、同社のキャリアアドバイザーの梅津太一氏と湯澤大和氏も交えて、AIエンジニアへの求人市場の状況などを中心にお届けします。(執筆:後藤銀河)


――――前回まで、日本のAIを取り巻く環境は、世界的にみて遅れていること、Society 5.0の実現に向けて、政策としてAIエンジニアを増やしていこうという潮流があるとのお話でした。

[河辺氏]国がAI戦略に基づいて、国際社会の中で生き残っていくためにAIエンジニアを増やしていこう、社会インフラを整備していこうという全体の流れがあって、それに対する供給源になるメーカーが出てきています。日本も国内のニーズ、グローバルのニーズの両方を支えていく必要があると思います。実際の求人情報をみても、顕在化したニーズや潜在的なニーズなどすべて合わせて、とても多くの求人が出ています。

日本は中国や欧米諸国と比較して、AIを部分的にでも自社業務に導入かつ成功したとする「AIアクティブプレイヤー」の割合が少ない。特にテック企業以外で顕著で、産業界では32%に留まっている。出展:BCG「Mind the (AI) Gap: Leadership Makes the Difference

AIエンジニアの採用は増加傾向にある

――中国やアメリカに水をあけられているということですが、ここにきて日本の企業もAI人材の確保に動き始めたということでしょうか?

[梅津氏]AIエンジニア関連の具体的な求人を例にすると、自動運転を実用化しつつある自動車メーカーや自動車サプライヤーなどが、何年も前から自社内で研究を重ね、アルゴリズムを作り、それを製品として実装しようという段階にきています。こうした実装フェーズでの業務に対応できるエンジニアの求人が多くなっています。自動運転開発では、すでにスタートアップと手を組んでのスクラッチ開発、という段階は終わっていると言えるでしょう。もちろん自分たちとは異なるアプローチ、違う視点のアルゴリズムなどはウォッチしているでしょうから、自動車メーカーやサプライヤーによる、スタートアップの買収といったニュースが流れるのは、そうした補完的な動きだと考えられます。

――自動車業界で、具体的なAI関連の求人は、どのような領域に対して出ているのでしょうか。

[梅津氏]例えばAI技術を使った製造ラインの自動化をどうすればいいのかとか、完全自動運転に向けてのシステム開発における課題解決のための求人、これはAI/機械学習エンジニア向けですね。あとは、具体的な領域ではなく、先進安全技術の革新、イノベーションというキーワードを使ったテーマで、研究部門からデータアナリスト、データサイエンティストのレベルに対する求人が見られるようになってきました。

――いわゆるライン設計の製品開発と、基礎研究に近い先行開発の両面の求人があるということですね。それぞれの求人はどれ位の割合で出ているのでしょうか。

[梅津氏]求人数全体を100%とすると、研究部門が15%、設計や生産などが85%ぐらいでしょうか。先行開発や研究部門を持っていて、人を採用し続けて研究も続けるような体力を持っている会社は、上場企業の中でもそれほど多くはありません。体感では、データサイエンティストからAI/機械学習エンジニアに対しての求人が大半を占めています。

求人ベースでみると、他にも完成車メーカーに部品を納めている、いわゆるTier1サプライヤーから出されているAI関連の求人が多く見られます。これは製品検査工程の自動化や、製造工程の自動化を実現したいというもので、搬送や検査の自動化、プロセスの自動化というテーマがほとんどです。

あとは、自社のアルゴリズムをすでに持っていて、AIをまだ導入していない会社、導入が進んでいない会社に対してパッケージ提案を行うコンサル側から、機械学習エンジニアの求人もあります。AI技術、アルゴリズムを持っているベンチャー企業が、他の会社へのソリューションとして適用、提供するような事業を起こしている求人が増えてきているということだと思います。

AIでなければ実現できない技術領域への求人も

[湯澤氏]他には、材料系の企業から量子コンピュータ技術を用いた新材料開発といった求人がきています。マテリアルインフォマティクスというキーワードになりますが、まだ実用化以前の、学術論文での成功事例が報告されているという段階なので、それを製薬会社や化学系の企業が自社の研究に取り入れようという動きが出始めています。

[河辺氏]素材メーカーが取り組んでいる材料開発は、過去の経験則による開発や、何度も実験を繰り返す試行錯誤の繰り返しで行われてきました。メーカーにはこれまで集積してきた材料の組み合わせ、触媒の組み合わせ、実験条件など、膨大なビッグデータがあるわけです。これをニューラルネットワークに学習させることで、材料開発の効率を飛躍的に高めることができます。AI技術を使ったマテリアルインフォマティクス、バイオインフォマティクスと呼ばれる領域です。

――求人市場としてはかなり活発だということですね。エンジニアに対してどのようなスキルが求められているのでしょうか。

[梅津氏]Industry 4.0の時も、最初は生産技術の改善を求めているようなふんわりとしたテーマでの求人が多かったのが、徐々に進んでいくと、システムが分かる人、使える人、といった募集へと変化していきました。AIに関する求人も、AIそのものを作る、アルゴリズムを開発するというものから、既存のAIを使う、社内へのAI導入を推進する側の求人が増えているという傾向が出てきています。

数学はAI開発の共通言語になる

[湯澤氏]エントリーレベルの求人では、大学理工系レベルの数学知識があることといった、ある種ポテンシャル採用のような求人も見られます。

特にデータサイエンティストを目指すのであれば、微分積分学、線型代数学、統計学などの大学の教養数学の知識が必要不可欠となる。

[河辺氏]そして、より高度な知識が求められるデータサイエンティストには、入力したデータから何らかの解を求めるという、複雑な計算式をAIで実現したいという目的がありますが、これはPythonでプログラミングが出来ることとは本質的に違うので、いわゆるプログラミング能力が求められているわけではありません。理工系大学の1、2年生で学ぶような微分積分学、線型代数学、統計学の知識が最低限必要になるのです。つまり、AI開発において、数学は重要な素養となっているのです。

[湯澤氏]学校でそういう数学の知識をきっちり身につけながらも、就職後はその知識をまったく活用することなく働いている方たちがいます。もし、そうした数学の知識があるのであれば、転職のチャンスにもなります。

中堅クラスの企業や人材派遣会社が、数学や統計学をやっていましたという人たちを受け入れて、数カ月の研修を行ったうえで、データサイエンティストを必要としている企業に派遣しています。同様に、大学との共同研究という位置づけで連携し、新卒、第2新卒に対して、短期間でデータサイエンティストとしてのスキルが身につけられるという採用マーケティングも出てくるわけです。

産業界へのAI導入はまだ黎明期、チャンスは多い

――例えば理学部で数学や物理学を学んだ、大学院で専攻したというバックグラウンドがあれば、データサイエンティストとして活躍できるチャンスが広がっていると。

[河辺氏]これまで企業への就職が難しかったポスドクの方たちも可能性があるわけです。もちろん、数学が得意だったという人や、実務経験の少ない若手であっても、Pythonの研修を受講しているような学習意欲のある人はチャンスがあります。

例えば、生産技術でロボットのティーチングや、機械設計をやっていましたとかいうエンジニアでも、AIに興味があって自己学習や研修で身につけた人にはチャンスはあると思います。特にAIで何かを変えていこうという志があるエンジニアであれば、積極的なチャレンジは受け止められる。日本のAIはまだ黎明期にあると言えますから。

[湯澤氏]私が担当した方にも、AIセミナーを自費で受講しながら独学し、自身の業務である製品計測結果の解析にAIを導入することで、製品性能の予測と解析業務の自動化という成果を上げた経験を元に、社内のAI関連部署へ配属された事例があります。

[河辺氏]そうですね。AIを使って改善すべきテーマは、自職場の中にも転がっているのですから、オープンなクラウドサービスを使ってやってみましょうと、上司に提案してやってみるのもいいと思います。まず自分でやってみて、本当に面白い、自分の仕事にしてみたいと思えたならば、それを実務経験としてチャレンジすればいいのです。

機械学科を卒業して3D CADを使っていますというエンジニアの方でも、一念発起して、専門学校で学んで黎明期の求人に応募することも可能なのです。AIエンジニアへの道は誰にでもチャンスはあるということだと思います。

AIおすすめ求人

電気・電子・半導体分野
機械メカトロ分野
IT分野
組み込みソフト分野
化学分野


河辺 真典(メイテックネクスト 代表取締役社長)
生産技術エンジニアとして5年・リクルートエージェントで8年の勤務経験あり。
弊社のコンサルタントは、転職支援のノウハウと業界・技術知識の両方に長けております。
その上で、単に転職先を決めるだけでなく、
転職先でご活躍いただく「失敗しない転職」をご支援するように心がけております。


梅津 太一(メイテックネクスト 東京CA部 部長)
中小から大手メーカーに対する採用コンサルティングを4年、その後はキャリアアドバイザーとして8年、延べ3500名以上のエンジニアのキャリアカウンセリング経験を持ちます。得意としていることは「求職者の強みの抽出」と「要素技術軸、工程軸(方法論)でのジョブマッチング」です。昨今のマーケットは先が読みくいが故、自身が今どのような経験を積むべきか、また、どの分野(強み・弱み)に負荷をかけ成長を促すかを一緒に考えていきたいと思います。


湯澤 大和(メイテックネクスト 募集企画グループ)
前職では半導体の分析技術者として4年、現職ではキャリアアドバイザーとして8年の経験あり。エンジニアの方々の仕事のやりがい・悩み・ご希望にできる限り寄り添えるように心がけて参りました。ご自身の想像になかったようなキャリアの可能性も比較頂きながら、納得のゆく決断を弊社に支援させていただきたいです。



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る