白金薄膜中への硫黄イオン注入でスピンホール効果を大幅に向上――MRAMや人工知能デバイスへの応用に期待 九州工業大学ら

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九州工業大学、山口大学、Nanyang Technological University(シンガポール)、Inter University Accelerator Center(インド)の研究グループは2021年1月27日、硫黄イオンを白金薄膜中に注入することによりスピンホール効果の大幅な向上に成功したと発表した。電流/スピン流間相互変換効率を50%に向上したという。

強いスピン軌道相互作用を持つ材料は、上向き電子と下向き電子の運動方向を異なる方向に曲げることができ、電流を横方向に流すと、縦方向にスピン流を生成できる。磁性体層へこのスピン流を流すと、スピン軌道トルクが磁化(スピンの集団的振る舞い)に作用し、歳差運動(強磁性共鳴)が励起される。

電流からスピン流への変換作用であるスピンホール効果の大きさ(スピンホール角)は、精密に歳差運動の様子を測定することにより算出できる。タングステンや白金などの重金属はスピンホール効果が著しいが、その大きさは0.1程度(効率で10%)に留まっていたという。

研究では、スパッタ法にて作製した白金薄膜に対し、イオン注入技術により硫黄イオンを白金に対して10%程度打ち込み、スピントルク強磁性共鳴法を利用してスピンホール角を評価した。その結果、硫黄イオンを注入した白金(Pt(S))は室温で0.276(低温で0.502)となり、白金(Pt)の室温で0.092(低温で0.064)と比較した際に飛躍的に向上していることがわかった。

また、NiFeの強磁性共鳴での減衰トルク変調実験や、Pt(S)へと流れ込むスピン流を電流へと変換する逆スピンホール効果実験でも、Pt(S)のスピンホール効果が大きく向上しており、現在、報告されている材料系で世界トップクラスのスピンホール性能を持つ材料の開発に成功したことになる。

今後、スピンホール効果からのスピン軌道トルクを利用した次世代磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)や、スピン発振子を利用した人工知能デバイスへの応用が期待できる。

なお、本研究成果は、ドイツの科学雑誌「Advanced Quantum Technologies」(2020年12月3日)に掲載され、2021年1月号の表紙として紹介された。

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