大学の研究者が砂を使った耐震装置の特許を取得

アラブ首長国連邦のシャルジャ大学は2025年1月13日、同大学の研究チームが、砂で満たされたコンテナを活用することにより、地震の揺れを減衰させて建物を損傷や破壊から守ることのできる新しい耐震装置を考案し、米国特許を取得したと発表した。

コンテナ中の砂に挿入されている建物構造直結プレートの運動が砂によって減速され、地震に対応する振動にヒステリシスが生じて地震エネルギーを吸収する仕組みだ。中程度以下の風や鉄道に起因する振動を受ける建物などの小変位振動に対してだけでなく、多数配置構成により強風や強い地震に対応する大変位振動に対しても充分なエネルギー吸収効果を持つ。出願特許は、2024年10月29日に米国特許商標庁から「US12129682B2」として認可されている。

地震の振動に耐える建物の耐震システムについては、大きく分けて耐震、免震、制震の3種類の構造がある。耐震構造には、壁や梁(はり)を強固に接合して強い圧力にも変形しない「剛構造」と、建物にある程度の変形能力を与えた「柔構造」がある。免震構造には、地震の揺れを建物に伝えにくくする積層ゴムアイソレータなどがある。また、制震構造には、揺れる方向に対して逆方向に建物を押し返すようなアクチュエーターを利用するアクティブ制振と、減衰装置すなわちダンパーに変形が生じることで振動エネルギーを吸収するパッシブ制振がある。パッシブ制振は、コストのかかるメンテナンスや外部電力が不要という利点があり、戸建住宅などにも取り入れられている手法だ。

研究チームは、砂のような天然の粒状物質を利用し、地震によって建物に加わる振動を緩和するパッシブ制振装置を発明した。「経済的で信頼性の高い耐震ソリューションであり、従来の耐震システムと異なって、メンテナンスが簡単で外部電力を必要としないため極めてコスト効率が高い」と語る。装置は、可動式プレートがスロットやロッドを介して装入された直方体形状のコンテナから構成され、コンテナには砂などの粒状物質が満たされている。可動式プレートは建物構造部分に直結されており、建物が地震によって振動すると可動式プレートも振動し始めるが、振動が砂によって減速され振動サイクルにヒステリシスを生じ、減衰ダンパー効果によって地震エネルギーを吸収する。「実証試験によって実効減衰比は37~75%と推定され、多くのパッシブ制振システムよりも高い」と、研究チームは説明する。コンテナ構成を連結配置することによりスケールアップが可能であり、大きな荷重に対する安定性とエネルギー減衰効果が増大する。

研究チームは、「この発明は、高価な耐震システムに対して経済性の高い代替方法を提供するもので、財政的に限りのある地域における広汎な応用を可能にする。安全なだけでなくメンテナンスコスト削減を促進し、構造の長期的な信頼性確保に貢献する」として、今後、建設企業、自治体、防災関係省庁などとの連携の可能性を期待している。

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