ECU、今後のトレンド。完全自動運転の実現を目指して――AZAPAエンジニアリング 井村佳人氏


この連載では、自動車に搭載され、様々な機能を制御している電子制御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)、その最新トレンドを紹介しています。

最終回となる第5回目の今回は「ECU、今後のトレンド」と題し、AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村佳人氏にお話を伺います。(執筆:後藤銀河)

第1回目:「自動車の様々なシステムを制御するECUとは」
第2回目:「ECUの変遷」
第3回目:「最新のECU事情」
第4回目:「ECUを取り巻く環境」


――先回、欧州に続いて、国内メーカーも統合ECUの開発に乗り出すなど、自動運転システムの実現に向けた研究開発が盛んに行われているという話がありましたが、ECUの視点ではどのような動きがありますか?

[井村氏]自動運転を実現するためには、カメラやセンサーでデータを取りながら、AI(Artificial Intelligence:人工知能)がリアルタイムで判断する、という流れがあります。様々なシチュエーションで何が起きているのかを正しく認識して、最適な車両挙動を選択するという制御のため、ECUにAIを搭載することになります。

現在、車載マイコンとしてはルネサス製CPUが高い市場占有率を保っていますが、AIや自動運転を見据えてECU開発を進める中では様々な可能性を検討しなければなりません。当社が試作・納品した自動運転用ECUでは、NVIDIAの「Jetson TX2」という強力なGPU(Graphics Processing Unit)を組み込んだモジュールを使用しました。今後完全自動運転の実現に向けてシステムもどんどん進化し、それと共にECUもさらに高性能化していくことでしょう。こうした開発の流れの中で、AI搭載用のECUが登場すると考えています。

――クラウドサービスのようなAIを実装するのでしょうか?

[井村氏]いえ、まだそのレベルではなく、機能的に限定されたもので、自動運転に特化したものを組み込むことになります。

現状では自動運転の技術としては、レベル2(人が主体の部分運転自動化)からレベル3(車が主体の条件付き運転自動化)に対応したものが登場しています。弊社のECUにも、レベル3に対応したAIを組み込んでいます。

ただ、自車単独で実現する自動運転には限界があり、レベル4(高度運転自動化)やレベル5(完全運転自動化)の実現には、インフラを含めて整備していく必要があります。

ドライバー不要の完全自動運転が実現するのは2050年頃

――レベル4やレベル5に対応したECUの登場はまだ先になりそうですか?

[井村氏]完全自動運転に対応した車両ができたとして、それが日本国内の普通の一般道路をレベル0の車両と並列して走ったら、事故が起きると思います。人命に係わることなので、ドライバーレスの車両がどこでも走れるようになるためには、路側帯や信号機などのインフラ、他の車両とのネットワークなど、解決すべき課題は多いです。今の開発スピードで考えると、あと30年位はかかると思っています。

講演会などでこの趣旨の説明をさせていただいていますが、同じような認識をされている方が多いですね。随分と先のようにも思えますが、完全自動運転システムのECUとしては、ターゲットを2050年頃において進めることになります。


井村佳人(AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長)
自動車のエンジンECU設計に深く携わり、エンジニアリング会社社長、SIerの経営を経て、2017年11月に同社に参画し、現職。OEMメーカーと共同で新規事業、研究開発などを手掛けている。

取材協力先

AZAPA エンジニアリング株式会社


ライタープロフィール

後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る