有機トランジスタ用半導体を従来の2000倍超の速度で塗布成膜――プリンテッドエレクトロニクスの実用化に寄与 東京工業大学

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東京工業大学は2020年6月29日、同大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の研究チームが、有機トランジスタ用半導体の高速塗布成膜に成功したと発表した。ディップコート法と液晶性有機半導体を用いたもので、成膜速度は従来の2000倍を超える2.4m/min以上に達している。

プリンテッドエレクトロニクスの実用化には、トランジスタに用いる有機半導体の高速成膜が不可欠であるにも関わらず、従来用いられてきた単結晶膜は副次的な結晶核の生成を抑えながら結晶を成長させる必要があり、成膜速度は数mm/min以下に留まっていた。一方で、実用化には数m/minが必要とされている。

同研究チームは今回多結晶膜に着目し、新たに開発した液晶性有機半導体の「Ph-BTBT-10」(化学構造は冒頭画像左)を用い、ディップコート法による半導体結晶膜の成膜技術(成膜イメージは冒頭画像右)を開発、スピンコート法により結晶粒界による電荷輸送への影響を低減した多結晶膜を作製できることを明らかにした。同多結晶膜は均一性、平坦性に優れており、これを用いることで10cm2/Vsを超える移動度を有するトランジスタを作製できる。

次に、実用化に向けてRoll-to-Roll形式による基板への有機半導体結晶膜形成を念頭に置き、ディップコート法による多結晶膜の形成と高速化を試みたところ、単結晶の育成条件(0.3mm/min)から成膜速度を上げると一定の結晶方位の揃った大粒径の多結晶膜(数cm/min)が、さらに成膜速度を上げるとモザイク状の組織を持つ無配向の多結晶膜(2.4m/min)が得られることが分かった。特にモザイク状の組織を持つ多結晶膜は、基板全面への結晶膜形成が容易で均一性も高いことが判明した。

Roll-to-Roll法による半導体薄膜の連続成膜のイメージ

さらに、SiO2/Si基板上に作製した同多結晶膜を用いて、ボトムゲートボトムコンタクト型トランジスタを試作して特性を評価した。モザイク状の組織を持つ多結晶膜は、一定の結晶方位の揃った大粒径の多結晶膜とほぼ同等の移動度(4cm2/Vs)を示したほか、配向性を持った多結晶膜と比較して移動度の異方性が小さく、トランジスタの集積化に適していることが判明した。

基板の引き上げ速度(A:1mm/s、B:5mm/s、C:10mm/s、D:40mm/s)と形成された結晶膜の光学顕微鏡写真、偏光顕微鏡写真、原子間力顕微鏡による表面観察像、作製したトランジスタの特性と移動度の分布(250個)

同研究チームは、ディップコーター次第でさらに成膜速度を上げられる可能性があるとしている。また、今回用いられたPh-BTBT-10以外の液晶性有機半導体でも同様の結果を再現可能で、「C8-BTBT-C8」を用いたトランジスタの平均移動度は5.2cm2/Vsとなった。

同研究チームは今後、結晶膜の特性と成膜速度などの成膜条件の相関から今回の成果の支配因子を突き止め、結晶膜の作製プロセスの工学的基礎を構築する。また、集積回路の試作を通じて、高速成膜された結晶膜の有効性をデバイスレベルで実証し、プリンテッドエレクトロニクスの実用化へのさらなる寄与を目指す。

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