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日立製作所は2025年2月18日、高速でのデータ検索が可能な格子暗号ベースの暗号技術を開発したと発表した。
近年、量子コンピューターの実用化が進んでおり、既存の暗号技術が解読される危険性が懸念されている。一方で、既存の耐量子暗号技術は演算処理の負荷が高く、高速での大規模データ検索が困難だった。また、検索の結果を用いた統計処理からプライバシーが漏洩するリスクも課題となっていた。
同社は既存の方式の安全性を解析し、安全性を損なわずに検索処理に使用するベクトルの次元数を削減した。これにより、既存の格子暗号技術と比較して検索速度が10倍に高速化したという。
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格子のイメージ図
また、秘密分散技術により、検索結果が一定数以上集まった場合のみ統計処理可能なデータに変換する技術を開発した。秘密分散技術とは、秘密情報を複数のシェアに分割し、一定数以上が揃えば元の秘密情報を復元できる一方で、一定数以下では復元が不可能な技術を指す。
準同型暗号技術(データを暗号化したまま演算できる暗号技術)と組み合わせることで、暗号化した状態での統計量計算が可能だ。患者のプライバシーを保護しながら医療データを分析するなど、データを安全に活用できる。
同社は今後、ヘルスケアや金融、公共などさまざまな分野にて同技術の適用を目指す。