大面積/大容量で柔軟なリチウム硫黄電池を開発――100サイクル後に85%の残容量

Korea Electrotechnology Research Institute

韓国電気研究院(KERI)の研究チームは2025年1月20日、大面積/大容量で柔軟なリチウム硫黄電池を開発したことを発表した。同研究成果は、『Advanced Science』誌に掲載された。

リチウム硫黄電池は、正極に硫黄、負極にリチウムを用いる。この電池のエネルギー密度は、理論上は従来のリチウムイオン電池の8倍以上とされている。また、コストの高いレアアースの代わりに豊富に存在する硫黄を使用することから、低コストで環境にも優しい。リチウム硫黄電池は、軽量で長寿命な二次電池としてアーバン・エア・モビリティ(UAM)時代を牽引する重要技術分野と位置付けられている。

しかし、リチウム硫黄電池は、充電と放電の過程で反応中間体としてリチウムポリスルフィドが発生する。これが正極と負極の間を移動し、不必要な化学反応を引き起こし、電池の寿命と性能を劣化させることが商業化における最大の障害となっていた。

これを解決するために、研究チームは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と酸素官能基を組み合わせた技術を導入した。SWCNTは、鉄を超える強度と、銅に匹敵する電気伝導性を持つ次世代材料であり、酸素官能基は電池内でのSWCNTの分散性を高める。酸素官能基と結合したこのSWCNTは、充放電時に膨張する電極を安定化させ、リチウムポリスルフィドの溶解と拡散を効果的に抑制する。その結果、活物質である硫黄の損失が大幅に減少した。

さらに、SWCNTの高い柔軟性と酸素官能基の親水性(溶媒との親和性)により、電極製造時に均一で滑らかな表面を形成できるため、大面積で大容量の電池設計が可能となった。その結果、研究チームは50×60mmの柔軟な厚膜電極を製造し、1000mAhのパウチ型リチウム硫黄電池の試作に成功した。この試作品は、100回の充放電サイクル後でも85%以上の容量を維持する高い性能を示している。

同研究院のPark Jun-woo博士は、「実際の産業現場で適用できる基礎的な枠組みを構築し、次世代リチウム硫黄電池の商業化の可能性を切り開く大きな成果となった。」と述べた。

KERIは、すでに国内特許を出願しており、UAMや航空宇宙、電気自動車などの次世代リチウム硫黄電池の需要が高い産業分野の企業から大きな関心を集めると予想している。

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