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あらためて注目集める「熱化学電池」を使った冷却技術、70%の性能向上に中国チームが成功

Credit: Yilin Zeng

中国の華中科技大学を中心とした研究チームは、可逆的な電気化学反応によって冷却効果を生み出す熱化学電池を応用した新たな冷却技術を開発した。この技術は、他の冷却方法に比べてエネルギー消費量がはるかに少ないため、安価で環境に優しい。

熱化学電池では、可逆的な電気化学反応によって生じる熱を利用して電力を生成する。理論的には、このプロセスを逆転する、つまり外部から電流を流して電気化学反応を起こすと冷却能力を生み出すことが可能だ。熱化学電池を使って熱と電気を変換しようという試みは古くは1880年ごろに行われ、1950年代に本格化したという。しかし、これまでの研究では、熱化学電池が生み出せる冷却能力、もしくは発電能力は限られていると考えられ、長年にわたって注目を集めてこなかった。それが近年、性能が大幅に向上し、人間の体温や工場の廃熱などを利用して発電できることなどから、研究に取り組むチームが増えてきている。

今回の研究では、使用する化学物質を最適化することで、熱化学電池の冷却能力を飛躍的に向上させることに成功した。

この新たな電池は、溶解した鉄イオンが関与する電気化学的酸化還元反応に基づいている。一方の反応では鉄イオンが電子を失って(Fe3+→Fe2+)熱を吸収し、もう一方の反応では鉄イオンが電子を得て(Fe2+→Fe3+)熱を放出する。最初の反応で発生した電力が周囲の電解液を冷却し、発生した熱はヒートシンク(放熱器)により除かれる。

研究チームは、電解液に使用する溶質と溶媒を調整することで、冷却能力を向上させた。まず、過塩素酸塩を含む水和鉄塩を使用することで、これまで試験されてきたヘキサシアニド鉄(III)酸塩などの鉄含有塩に比べて、鉄イオンがより自由に溶解/解離できるようになった。さらに、溶媒には純水ではなくニトリルを含む溶媒を用い、その中に鉄塩を溶解した。その結果、電池の冷却能力は70%向上した。

この最適化した冷却システムでは、周囲の電解質を1.42K冷却することが可能だ。以前に報告された熱化学式冷却システムの0.1Kと比較すると、大幅な改善と言える。

この技術は拡張性を持つため、ウェアラブル冷却デバイスから産業用まで、さまざまな用途に応用できる可能性がある。研究チームは、今後さらにシステム設計を最適化し、商業的な応用の可能性についても研究していくとしている。

研究成果は2025年1月30日付で『Joule』誌に公開された。

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