- 2025-2-6
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![](https://engineer.fabcross.jp/wp-content/uploads/2025/02/240206_isct_01.jpg)
東京科学大学は2025年2月5日、日本電子、FHエレクトロンオプティクス、京都工芸繊維大学および同志社大学との共同研究チームが、高いコントラストでの位相イメージングが可能な電子顕微鏡法を開発したと発表した。
これまでの電子顕微鏡では、数十~数百nm程度の構造の場合には電子線散乱が弱く、空間周波数が低いため、高いコントラストで可視化するのが難しかった。
この解決に向けて、位相板を用いた位相イメージング法が用いられている。ただし、従来の手法では、電子線照射により位相板自体が経時劣化してしまうことが課題となっていた。
今回の研究では、通常の走査透過電子顕微鏡の明視野イメージング法で用いる円形の開口絞りの代わりに、半円形の開口絞りを導入することで、低空間周波数と高空間周波数の双方を含んだ、位相コントラスト伝達関数を有する位相イメージング法を開発した。
同関数は、通常の明視野像成分に加えて、微分位相コントラスト成分を含むものとなっている。フォーカスに関わらず、全ての空間周波数にて均一な強度成分を得られる。
同研究チームは、同手法を生体試料や有機材料、磁性試料の可視化に適用し、従来の明視野イメージング法と比較して、高いコントラストでのイメージングが可能であることを確認した。
特に、有機材料や生体試料において、エッジでのコントラストが大きく増強した。微分位相コントラスト成分に相当するレベルだという。また磁性材料では、従来の手法では観察できなかった磁区が可視化された。
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今回開発した手法を用いた有機材料、生体試料および磁性材料のイメージング例
今回開発した手法は、通常の電子顕微鏡とほぼ同程度の低コストなセットアップで、より高いクオリティでのイメージングを可能とする。
生物分野に用いることで、これまで染色を要していた生体組織が、染色なしの状態で観察可能となる。また、有機材料の構造もそのまま観察可能となるため、今後は材料開発および解析での活用が見込まれる。
加えて、半導体での電位分布や、磁性材料での磁場解析も可能であり、デバイス開発分野での応用も期待される。