- 2025-2-17
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Image courtesy: Ryosuke Kido from Doshisha University Image license: Original content Usage restrictions: Credit must be given to the creator.
同志社大学は2025年1月13日、同大学の研究チームが電気自動車(EV)や電気機器向けに、固体電解質と液体電解質を使用した難燃性の準固体リチウムイオン電池を開発したと発表した。従来のリチウムイオン電池よりも安全で、イオン伝導性が高く、サイクル性能も向上している。この研究はTDKと共同で行ったもので、その詳細は2024年10月11日付で『Journal of Energy Storage』に掲載された。
近年、汚染物質を排出する燃料駆動機械に代わる、便利で環境に優しいEVや電気機器が普及している。それらで広く使用されているリチウムイオン電池の需要が高まっているが、従来のリチウムイオン電池は安全性や寿命に課題がある。市販のリチウムイオン電池に使用されている有機電解液は、エネルギー効率を高めるために不可欠と考えられているが、可燃性の有機溶媒を大量に含むため、市場での需要が高まる中で安全性の確保が懸念されている。
一方で、全固体電池はその安全性が注目されているものの、固体電極と電解質の界面ではリチウムイオン移動が最適にならない。さらに、固体電極の膨張と収縮は接合界面を破壊し、イオン移動を妨げる可能性がある。そのため、安全性、実用性、性能を高められる安定した接合界面を持つ効率的な固体電池を開発する必要がある。
こうした課題を克服するため、今回の研究では固体電解質と不燃性の液体電解質を組み合わせて、新しい難燃性の準固体リチウムイオン電池を開発した。
この新しい電池には、シリコン(Si)負極と、リチウムイオン電池の次世代材料と考えられているLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)正極を採用した。両電極間を、オハラ製の固体リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスシート(LICGC)によって分離している。さらに、互換性と性能を高めるため、それぞれの電極に合わせた不燃性でほぼ飽和状態の電解液を開発した。この電解液には、電極および固体電解質界面との適合性がある、リン酸=トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)と炭酸メチル2,2,2-トリフルオロエチルを使用した。その結果生まれた30mAh級の準固体パウチ型セルは、優れたイオン伝導性、熱安定性、電気化学的性能を示した。
研究チームはさらに、電気化学インピーダンス分光法、充放電試験、断熱熱量計(ARC)を使用して、開発した準固体リチウムイオン電池の熱安定性と電気化学的性能を評価した。その結果、この電池は高い充放電容量と良好なサイクル性能を示し、内部抵抗の変化もほとんどなかった。さらに、ARC試験により、それぞれの電極に合わせて開発された電解液を含むSi-LICGC-NCM811構造は熱安定性が向上しており、150℃前後の高温域でも副反応に伴う発熱が非常に低いことが明らかになった。
今回開発された準固体リチウムイオン電池は、高エネルギー密度の全固体電池に代わる、より安全でより耐久性のあるものだ。効率的で安全な次世代EVやドローンのようなコードレス機器開発を促進する可能性があるという。その普及は、ユーザーの利便性を向上させるだけでなく、持続可能な経済成長の促進につながると期待される。