超ワイドバンドギャップを持つ酸化ガリウムの可能性――大電力高温用半導体への応用も

酸化ガリウム(Ga2O3)の性能

酸化ガリウムで次世代パワー半導体超えのバンドギャップへ

アメリカのフロリダ大学および海軍研究所、韓国の高麗大学の共同研究チームが、超ワイドバンドギャップを持つ半導体、酸化ガリウム(Ga2O3)の将来的な可能性について、2018年12月11日の『Journal of Applied Physics』誌に論文公開している。酸化ガリウムは、パワー半導体として利用されているSiCやGaNよりも広いバンドギャップを持っており、より大きな電力の充電システムや電力グリッドへの供給システムへの活用が期待されている。

パワー半導体といえば、第1に念頭に浮かぶのがシリコン(Si)だが、近年では、Siよりもバンドギャップの広いシリコンカーバイド(Sic)や窒化ガリウム(GaN)などの「次世代パワー半導体」が注目を浴びている。それに続く「第3のパワーデバイス用ワイドギャップ半導体」として関心を集めているのが酸化ガリウム(Ga2O3)だ。Siのバンドギャップを超えるだけならいざ知らず、SicやGaNのバンドギャップをも上回ることから、実用化に向けた研究が盛んに進められている。

マイクロ電子デバイスにおいて、バンドギャップは材料の導電特性を決定する重要な因子だ。一般的な半導体であるSiは1.1eVの狭いバンドギャップを持つのに対し、パワー半導体として活用されているSiCやGaNは3.3eVの広いバンドギャップを持ち、絶縁破壊に対する抵抗力が大きい。Ga2O3のバンドギャップは4.8eVと非常に広く、更に高い絶縁破壊抵抗力を持つとともに、n型としての素子制御が可能であり、SiCやGaNを超える大電力高温用半導体としての可能性がある。近年世界的に活発な研究開発が行われており、コーネル大学による電界効果型高耐圧トランジスタ、京都大学発ベンチャーによるショットキーバリアダイオードなどが発表されている。

論文の筆頭著者でフロリダ大学材料科学工学科教授のStephen Pearton氏は、「Ga2O3は、簡便な融液成長法により単結晶基板が作製でき、大口径化および製造コストの削減が充分可能だ。半導体メーカーにとっても高電力および高温分野で、非常に応用性の高いマイクロ電子デバイス材料となる。電気自動車に充電する電力供給システムや、風力タービンなどの代替エネルギー源から電力グリッドに供給するコンバーターに用いるのに理想的だ」と語る。また、Ga2O3は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のベースとして活用できるとし、「多くの電子デバイスでSi基のMOSFET電子スイッチが使われているが、電気自動車の充電ステーションなどのシステムでは、より高電力レベルで動作するGa2O3を用いたMOSFETが最適だ」と語る。

一方で、研究チームは、先進的なGa2O3基MOSFETを製造するには、ゲート誘電体材料の高性能化とともに、デバイスからもっと効率的に放熱する熱管理手法の考案が必要であると提言している。Pearton教授は、Ga2O3がSiCやGaNに取って代わることはないが、適用できる電力や電圧の範囲を拡大する役割を果たすことは確実だろうと、結論している。

進む酸化ガリウムの研究開発〜トランジスタやウエハなど

酸化ガリウムは実用化に向けた研究が国内外で盛んに進められている。近年の研究では、情報通信研究機構(NICT)と東京農工大学が共同で、酸化ガリウムを用いたトランジスタの開発に成功している。

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また、京都大学が同大学発のベンチャー企業であるFLOSFIAと共同で、コランダム構造(α構造)の酸化ガリウムを用いた絶縁効果型トランジスタ(MOSFET)を開発している。

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さらに、ノベルクリスタルテクノロジーがタムラ製作所や東京農工大学と共同で、Φ2インチの酸化ガリウムウエハを開発し、量産を開始してい

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